2309No.88

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

廃棄物処理法に基づく立入検査について

 

廃棄物処理法第19条第1項では、「県知事(政令市長を含む)又は市町村長は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に事業者、一般廃棄物若しくは産業廃棄物若しくはこれらであることの疑いのある物の処理を業とする者その他の関係者の事務所・事業場(中略)その他の場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」と規定しています。

 

嚙み砕いて言えば、立入検査とは廃棄物の処理に係る者、場所に行政職員が直接出向いて(最近では、オンラインによる検査も実施されている。)、適正な処理が実施されているかを確認することを指しています。また、環境省発出の行政処分通知(=総合判断説通知)にある有価物性の判断のために、廃棄物の疑いがあるものにまで範囲を拡大して法の適用ができる規定となっています。

また、検査を拒否又は妨害した場合は、それだけで直罰が適用されることになります。罰則は最高でも30万以下の罰金に留まっていますが、それ以上に欠格要件に該当することに至り、法に基づく業許可や施設許可の全てが取り消し処分となってしまいますので、こうした行為は絶対にやめてください。

 

一般廃棄物を所管する市町村の集計はありませんが、産業廃棄物に係る立入検査数は、環境省が毎年取り纏めて公表しています。先日発表された最新の令和3年度における実施状況は以下のとおりでした。

 

立入検査数

うちオンライン

全国計

189857

79

うち静岡県

 2247

同静岡市

    62

0

同浜松市

   540

0

 検査実施数は自治体により大きな差があります。県内結果を含め上表のとおりですが、全国的に見れば岩手県27千件を最大に、最少は熊本県(政令市を含む)77件まで大きな開きが見られます。件数の多い自治体は、過去に産業廃棄物に係る大きな事件が発生したところ、逆に少ない自治体は事件発生が少ない平和なところという推測ができます。また、検査数が少ない自治体は、許可審査業務等に追われ現場確認にまで人手が回らない状況があるのかも知れません。

 

一方、立入検査を受ける読者の皆さんの立場で、注意点を書いてみたいと思います。

ある日突然、行政職員が「立入検査です。」と言って会社に来たら「うちは何か違反でもしているのか?」と思ってドキッとするかも知れません。もちろん、通報等を基に違法性の確認のために実施する立入検査もありますが、大部分は法に基づく適正な廃棄物処理が行われているかを確認するために行われるものです。従って、ありのままの現場を見てもらう、聞かれた事項は正直に回答することを心掛けてください。違法性があるのではないかと自分勝手に判断して、取り繕うような回答はしないでください。結局最後はつじつまが合わなくなって、墓穴を掘る結果になってしまいます。

 

処理業者の立場であれ、業者の立場であれ、誰もが違反なく廃棄物処理を行うよう取り組んでいるはずですが、勘違いや法の理解不足で規定に合わない処理が行われてしまうことも間々あります。大切なことは、立入検査で受けた指摘事項を真摯に受け止め、対応策を立てたうえで、社内で情報共有し、再発をさせないということです。重大な違反でなければ、行政職員も人間ですから、天下の宝刀をいきなり抜いて不利益処分の発出には至らないでしょう。それでも、再度立入検査を実施した際、同じ指摘をしなければならない状況であったならば、口頭指導では済まず不利益処分の発出に向かって階段を一歩上ることになってしまいます。

こうした点でも、立入検査=ウェルカムの気持ちを持って対応したら良いと思います。違反の程度が小さい、改善が容易なうちに改善点を指摘してもらうと理解すれば、立入検査は、自社にとって有益な指導を受けるチャンスと考えることができます。