2304No.83

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

専ら物(もっぱらぶつ)について(その1)

 

廃棄物処理に携わる読者の皆さんは、「専ら物」という言葉をお聞きになったことがおありでしょう。また、専ら物に該当する紙くずや金属くずの取扱いについては許可なしにそれを行うことができることも多くの方がご存じのことと思います。しかし、許可不要=廃棄物処理法の全ての責務が免除されると間違って解釈し、運用されている事例が散見されますので、適正処理確保の観点から今回と次回はこれを題材に書いてみます。

 

まず、最初に押さえておきたいことは、排出者が紙くずや金属くずを取引相手に渡すとき、代金をいただければ(排出者側にお金が残る=手元プラス)、これは売却行為であって廃棄物の処理委託には当たりません。すなわち、この場合は、引き渡す紙類や金属類は廃棄物ではありませんので、専ら物には該当しないことをご理解ください。一方で、こうした古物は市場価格の変動が付きものですから、排出者側で見れば手元プラスになったり、逆に相場が下がれば手元マイナス(引き渡しに代金が必要)になったりします。

従って、後者の場合にのみ廃棄物に該当し、その取り扱いについて「専ら物」として許可免除等の特例が設けられているということになります。適正処理確保のポイントは、まず取引価値の有無の観点から有価物としての売却行為か、廃棄物としての処理委託行為かをしっかりと把握することです。

 

次に、専ら物に係る許可不要のルールは、法律でどのように規定されているかを見てみましょう。法第7条第1項では、他人の一般廃棄物を収集運搬する際は、市町村長から許可を受けなければならないことを規定し、例外として専ら再生利用の目的となるものを扱う者は許可不要と定めています。同様に第7条第6項では一般廃棄物処分業について、第14条第1項では産業廃棄物の収集運搬業、同条第6項では産業廃棄物処分業について、それぞれ同じような規定を設け許可不要としています。この条文だけ読めば、再生利用されるものは全て例外規定に該当するように読めますが、法制定直後に次のような運用通知が発出されており、紙くず等4種類の廃棄物だけが例外規定に該当することを周知しています。

 


 

昭和46年10月16日付 衛整第43号

「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて」(通知)

(中略)

4 産業廃棄物処理業  

(2) 産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。

 

この通知文から、特例を設けた意図は、法施行(昭和46年)より前から、古物商の許可を受けて業務を行っている回収業者等に対して、二重の許可取得を必要としないことを目的としたものであったと理解できます。また、それと同時に、専ら物に分類されるような品目は、法施行前から回収業者の手によってリサイクルに資する流通経路が成立していましたので、国としてはこうした既存の流通経路を無理やり廃棄物処理法のルールに当てはめるのではなく、例外として認めて活用した方が無駄がないと考えたのでしょう。

 

  しかし、ここで通知文の波線部分にご注目ください。許可不要となるのは、法施行前から専ら物を取り扱っていた回収業者に限定されると読めます。これが通知文に基づく法運用の怖いところで、この通知、あるいは「専ら4品目」の取扱いについて、許可権者によって解釈・取扱いが異なり、混乱の原因を作ってしまいました。

どういうことかというと、ある自治体では、この通知を狭義に解し、法施行以後に取り扱いを開始した者又は、「専ら4品目」以外の廃棄物を併せて取り扱う事業者については、許可不要の特例適用はないものとしていました。一方で、多くの許可権者は、新規に事業開始した回収業者も、「専ら4品目」以外の廃棄物を取り扱う事業者であっても、この通知適用対象としていました(広義説)。

 

 それから時代が流れ、この解釈の相違が大きな問題を引き起こしました。

それは、全国展開する衣料メーカー「U社」が、顧客が着古した衣料を店頭で回収し、再生工場で利用する取組を開始したところ、狭義の解釈をする一部の許可権者から法違反であると「待った」が掛かったのです。そこでU社は、国に泣き付きます。流石に全国展開するメーカーは違いますね。この事態を受けて、平成20331日の内閣府規制改革会議の閣議決定の中で、次のような決定がされました。

 

規制改革推進のための3か年計画

使用済衣料品・繊維等のリサイクルに係る店頭回収・運搬・処分について

複数の企業が環境への取組として、衣料製品を始めとする古繊維のリサイクルのために店頭回収を試みている。しかし、回収した古繊維の取扱に関して地方公共団体の見解にばらつきがあるため、全国展開できないという問題が発生しており、古繊維の回収が進まないという指摘がある。したがって、古繊維は、廃棄物処理法に定めのある「専ら再生利用の目的となる廃棄物(いわゆる専ら物)」に当たる場合、収集運搬及び処分業の許可は不要であり、例えば衣類の販売等、ほかの業を主として行っていても、同様に業の許可は不要であることを周知する。

 

これによって、狭義説は否定されることとなり、広義説に基づく運用に全国が統一されたのです。

 

本題は、専ら物の処理委託に際しても、委託者(排出者)に法的な規制が課されていることを書きたかったのですが、長文となってしまいましたので、それは次回以降に書くこととします。