2303No.82

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

 

許可権限と指導取締責任は表裏一体

 

前回コラムでは、掛川市内における医療廃棄物流出事件について寄稿させていただきましたが、その後、掛川市や森町で流出物を回収する費用を予算化し議会に議案提出したとの報道がされました。また、同じ時期には静岡県が放置された産業廃棄物の撤去に困っている市町に対し、その費用の1/2を支援する制度を創設すべく予算化作業を進めていることが新聞に掲載されました。これらの報道内容に関し、私は強い違和感を持ちましたので、今回は「許可権限と指導取締責任」について書かせていただきます。

 

皆さんご承知のとおり廃棄物処理法に基づく許可権限は、一般廃棄物については市町村長が、産業廃棄物については知事又は政令市長(政令指定都市又は中核市の長)が有しています。ですから、一般廃棄物に係る処理業許可申請の提出先は、業務を行おうとする市町村の窓口になりますし、一般廃棄物の不適正処理が行われた場合には、その場所を管轄する市町村が、行為者の特定等に係る調査や原状回復の命令を発出する権限(義務・責任)を有しています。

 

一方、産業廃棄物に関しては、その権限を有しているのは県知事又は政令市長となりますので、静岡県内で言えば、静岡市・浜松市にあっては夫々の市長に、そのほかの市町の区域にあっては県知事がその権限を有しています。また、産業廃棄物に係る許可権限を有している以上、許可権者は不適正な処理が行われないように監督・指導する責任を有していますし、結果的に原因者不明や行為者等の資力不足によりその片付け回収(原状回復)ができず環境保全上支障が生じると判断したときは、行政代執行によりその支障の除去を行わなければならない責任を負っています。ですから市町の立場で言えば、産業廃棄物の不適正な処理で困っているとき、市町は、それに関する指導・監督権限は有していませんし、その除去に当該市町の予算を用いることは、地方財政法に抵触する恐れが高いものと考えます。

こうした法律の立て付けを考えたとき、放置され原状回復がされない案件に対し、市町に対して産業廃棄物の除去費用を「支援する」というのは全く見当違いの制度設計であると私は判断します。支援は助けるという意味ですが、この制度を利用すると、逆に市町が県を助けることになってしまいます。

 

この報道があった後、所管課の静岡県廃棄物リサイクル課の担当者に電話照会させていただきましたが、本制度の該当案件は、以下の3点が満たされた場合との回答をいただきました。

(1)放置された産業廃棄物の除去について原因者が不明又は資力不足で実行されない

(2)静岡県としては、除去されない状況で放置されたとしても環境保全上の支障が生じるおそれがないと判断して撤去等の行政代執行は行わない

(3)地元市町の判断・要望として景観上好ましくない等の理由により撤去を行う場合

 

廃棄物処理法の運用に際しては、「環境保全上の支障のおそれ」は、広義に解釈するのが通例で、保管場所からの悪臭・衛生害虫の発生や雨水の汚染(地下浸透)など「おそれ」の解釈は幅広いものと考えられています。その点からも、撤去義務を負わない地元市町が予算措置をしてまでも、それを実施しなければならない状況は、充分に「環境保全上の支障発生のおそれ」が存在すると考えます。

 

本件については、年度末の県議会で来年度予算案審議がされる筈で、その経過に注目していきたいと思います。くどいようですが産業廃棄物に関する許可権限を有しているのは県知事であり(両政令市を除く)、同時に指導監督責任を有しているのは県知事以外にはいません。権限と責任は表裏一体の関係にあるわけで、責任の部分を他者に切り分けるのは道理にかないません。