2211No.78

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

廃棄物処理法はどう変わったか(その10:特別管理廃棄物第3回)

 

前2回に続いて、特別管理産業廃棄物についてです。

今回は、特別管理産業廃棄物に係る規定は、「諸制度の先駆け」別の言い方をすれば「実験台」という話を書いてみたいと思います。

廃棄物処理法に特別管理産業廃棄物が初めて登場したのは、1991年(平成3年)の大改正のときというのはこれまでも書いてきたとおりで、特別管理産業廃棄物処理基準も普通物の処理基準に付加する形で定められました。また、同じ改正で、「産業廃棄物管理票(通称マニフェスト伝票)」が登場しますが、その使用が義務付けられた(施行は平成5年)のは、特別管理産業廃棄物の処理委託に際してのみで、普通物については、マニフェスト交付義務が課されていませんでした。特別管理産業廃棄物の排出者は大規模製造業、医療関係機関、有害物を取り扱う事業場等が多くて、比較的廃棄物処理に対する関心が高く、かつ経費負担も求め易いという判断が働いたのでしょう。

世の中に初めてマニフェスト伝票が出回るという状況では、まず特別管理産業廃棄物排出者への義務としてその定着化を目指し、ある程度目途が付いた段階でそれを普通物にまで拡げようとする意図がありました。そういう意味で実験台として特別管理産業廃棄物が使われたとの推測ができます。実際に、この改正以後、国からは義務化されていない普通物へのマニフェスト使用も盛んに推奨されるようになり、ついに平成9年の法改正で普通物にまで範囲を拡大して、全ての産業廃棄物にマニフェスト交付が義務付けられるに至りました。

次に、同じように特別管理産業廃棄物が実験台なったケースは、平成30年に法改正された電子マニフェストの使用についてです。ただし、全ての特別管理産業廃棄物排出事業者に対してではなく、同排出量が年間50トン以上の多量排出事業者限定の制度ですが、これも全ての産業廃棄物に対する義務付けの予告と私は推測します。

電子マニフェスト制度については、令和2年6月号のコラムに詳細を記載していますのでそちらを是非ご確認いただきたいのですが、平成9年に制度がスタートしてから一向に普及率が向上しない状況が続きましたが、世の中のIT化の流れの中でようやく50%を超えるところまで上昇してきました。この流れを加速させ、近い将来100%に近付けようとする意図を持った法改正であったと考えます。そうすると何年か後には、マニフェスト義務化と同様に、電子化義務付けの法改正が行われることは容易に想像できるところです。

もっとも、多量排出者への電子化義務付けにおいても、免除特例が規定されていますので、全ての産業廃棄物に拡大されたとしても、数年に1度しか排出しない事業者などへの義務免除の規定は設けられるものと考えます。その点では、例外なしに義務化しているマニフェスト交付と異なる制度にならざるを得ないものと推測します。

このように、特別管理産業廃棄物は普通物に比べて発生量が少なく特殊性があることから、法律の制度設計を考えるとき、まずそれをターゲットにした実験台として使われてきた歴史を持っていると見ることができます。もう少し、素直な見方をするのであれば、より高いリスクを持つ特別管理産業廃棄物については、先進的に制度化の対象としてきたと言えると思います。つまり、特別管理産業廃棄物に対する規制強化は、普通物に対する規制の予告と考えることができます。