2206No.73

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

大井川流量減少問題について

 

  3年前のメルマガ第39号のコラムで、山梨県内で発生した汚泥の不法投棄事件に関連して、大井川の源流部から投棄行為があった富士川支流に多量の水を分流していることを記載させていただきました。今回は、廃棄物処理の観点からは離れますが、JRリニア新幹線トンネル工事に関連する環境保全の観点から最近の報道を見てみたいと思います。

  まず、本件に関しては、JR東海が計画する中央リニア新幹線の南アルプストンネル工事に伴い大井川河川水が減少し、山梨県側に流出してしまうという問題が発端でした。全国的にも話題になったJR東海と静岡県との協議において、工事期間中を含めて山梨県側に流出する水の全量を大井川に戻すことが、この問題の最大の争点でした。工事に伴う山梨県側への流出量は最大毎秒2.9㎥と試算されていますが、全量戻しには、技術面で大きな課題を抱えたまま長期間に亘って協議が続けられいて、トンネル工事に着工できない状況が続いています。そうした中で、4月末に表面化したのが、田代ダムの取水抑制の提案で、この問題解決の手段として有効であり妥協点を見い出せるのではないかと注目されています。

 そこで、まず田代ダムについて調べてみました。

大井川源流部に設けられた田代ダムからは、毎秒5㎥の河川水が、導水管により、富士川支流の雨畑川に分流されています。この水は、東京電力が水利権を有しており、導水管の先で水力発電に利用されいて、2つの発電所が設けられ、合計発電能力は4万キロワットに達しています。これら施設の歴史は古く、1923年(大正3年)には既に完成していたと記録されています。しかし、源流部において、毎秒5㎥という水量は膨大で、ダム下流では水がない状況(川枯れ)が生じて大きな問題となりました。その後、県や下流市町村と東京電力の話し合いの結果、川枯れを起こさない最低水量が確保されることになりましたが、その量は、毎秒0.43〜1.49㎥に留まっており、大部分は現在も導水路により富士川へ分流されています。

こうした中で、今回トンネル工事に伴う大井川河川水減少対策として登場したのが、田代ダムでの導水管分流水量を減少させて、大井川本流に戻すという提案です。私は、リニア問題が表面化した時点から、その解決策はこれしかないと思っていましたので、「やっと出てきたか」という思いがしました。水力発電は、再生可能エネルギーとして重要な役割を果たしていますが、それ以前に本来の流路から人工的に分岐させてしまっていることの方が、環境的には問題が大きいと私は考えます。第39号コラムでは、日本軽金属の水力発電のために、富士川河川水の約1/2が取水されていることも書きましたが、こうした水利権の問題については、社会状況の変化を踏まえ、今一度見直していくべきと考えます。

また、JR側の提案に対し川勝知事のコメントが一貫しないことも気になります。発表翌日には、「過去の歴史から考えて話が破綻している。」と受け入れない姿勢を示したかと思えば、半月後の5月12日には「非常に強い関心があり、検討に値する。」と評価しています。静岡県人以外の国民からは、「静岡県がごねている」と見られているわけですから、冷静・客観的な判断を期待したいと思います。

併せて、田代ダムの取水抑制策でこの問題が解決したら、トンネル工事終了後も、取水抑制を継続できるよう静岡県と東京電力及び水利権を管轄する国土交通省を含めて調整できたらと考えます。