2201No.68

KAMAちゃんの「廃棄物ひとくちコラム」

年頭に当たって

 

読者の皆様、明けましておめでとうございます。

健やかに新年をお迎えのこととお慶びを申し上げます。

振り返れば、昨年は、前年から続くコロナ感染症の影響で、日常生活や事業活動において大きな制約を受ける毎日でした。デルタ株による爆発的な感染拡大や医療体制の逼迫など私たちの生命を脅かす危険な状況が押し寄せてきましたが、ワクチンの接種や医療従事者の皆様の献身的な努力によって、一息つける落ち着いた状況を取り戻すことができました。今後は、オミクロン株を始めとする新しい変異株による感染拡大が生じないことと、ブースター接種の滞りない実施、治療薬の開発・承認等に期待したいと思います。

 

さて、1年の始めですので昨年1年間を振り返りながら、環境・廃棄物分野における今年の展望をしてみたいと思います。

まず最初に、昨秋誕生した岸田政権では、菅前政権の方針を継続し「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す。」として施政方針に盛り込んでいます。また、就任直後にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約締約国会議)では、岸田首相が首脳級会合「世界リーダーズサミット」に参加し、2030年までの期間を「勝負の10年」と位置づけ、全ての締約国に野心的な気候変動対策を呼びかけました。この分野では、先進国の中でこれまで主導的な取組をしてこなかった我国が、今後具体的にどのような施策(野心)を持って対応していくかに注目していきたいと思います。

 

  次に法整備の点では、昨年6月に「プラスチック資源循環促進法」が新たに制定されました。現在、容器包装リサイクル法を始めとする6つの個別リサイクル法が運用されていますが、この法律は7番目の個別法の位置づけになります。産業廃棄物該当の廃プラスチック類ではなく、一般廃棄物のうちペットボトルを除くプラスチック製廃棄物が対象となります。従って、現時点で新法対象物を「可燃ごみ」として収集処分している自治体にあっては、住民に分別排出を求めたうえで、それを収集する体制の構築が必要となります。その後の処分については、容器包装リサイクル法と同様に、自治体以外の指定施設でリサイクルが行われることになります。本年6月までには施行されることになっていますが、運用に係る政省令の公布がされていませんので、具体的な内容が分かった時点で、情報提供させていただきます。

 また、法改正ではありませんでしたが、廃棄物処理法に定める廃棄物処理施設に係る施設更新の手続きについて、従来の概念を覆す運用通知が発出され驚きました。施設の老朽化に伴って更新を計画されている皆様にとっては、環境影響調査を要さないことや許可申請手続きが不要なことなど金銭的にも時間的にも大きなメリットがある運用変更ですが、これを法改正ではなく、通知の発出という手段で行ったことに違和感を覚えました。通知内容の運用は、各自治体の考え・判断によるという部分もありますので、設置者本位でかつ全国統一の適用を期待したいと思います。

 

3点目に、廃棄物処理を巡る事件・事故としては、各地で発生した不法投棄の後処理で、様々な問題が提起された1年でした。

8月号コラムに掲載した「熱海市内で発生した土石流」案件では、廃棄物不法投棄(一部報道では不適正処理と記載していますが、間違いなく不法投棄です。)が、土石流発生原因の全てではありませんが、少なからず影響したことは間違いありません。本件に関しては、熱海市・静岡県において是正指導経過に係る検証が行われていますので、行政責任の明確化の観点で関心を持っていきたいと思います。

また、10月号コラムでは、前年に発生した伊豆市内宗教法人敷地内における不法投棄案件に対して廃棄物処理法に基づく「措置命令」が発出されたことをお伝えしました。前述の熱海市内における土石流発生が命令発出の引き金になったことは、容易に想像ができますが、そこにも記載したように敷地内残留の不法投棄物については、流出防止の命令に過ぎませんので、措置命令履行期限後の静岡県の対応を注視しています。まさか、最終処分場の許可を取得していない場所での、廃棄物残留(埋立と解する)を許すことはないと信じたいものです。

廃棄物の不法投棄関連ではこのほかに、3年前に発覚した富士川支流雨畑川における汚泥投棄事件について、度々報道がされました。投棄現場下流の川底には、有害物質を含むポリマー汚泥が堆積しており、県による実態調査が行われています。量や濃度の違いは別として、そこに流出汚泥が堆積していることは間違いないのですから、今後どのような手法で対策をしていくかが課題です。当然に、原因者負担で対策は行われるべきですが、これまでの経過から、原因者の手によりそれが実現する可能性は極めて低いと言えるでしょう。その時に、許可権限を有する山梨県の指導監督責任がどのような形で具現化されるかに注目していきたいと思います。

 

最後に、御前崎市における廃棄物焼却施設設置を巡る問題が解決したことも大きな動きでした。住民投票で圧倒的多数の反対票が投じられたことを受け、事業者は計画撤退の道を選択しました。そこまで環境アセスメント調査の実施等で相当の費用(私は億単位と推定します。)を投入してきた状況の中で、勇気ある決断であったと評価したいと思います。と同時に、未来への教訓として、どこにボタンの掛け違いがあったのかも検証が必要と考えます。

 

以上、こうした世相の中で、なかなか明るい話題で年明けとはなりませんが、皆様にとって輝かしい1年となりますことを祈念し、本年最初のコラムとさせていただきます。

引き続きのご愛読宜しくお願いします。